Jan 13, 2016

東南アジアへの牡蠣事業展開

約1ヶ月前に、ご縁があってインドネシア(ジャカルタ、スラバヤ、バリ)に行きました。その後、ベトナム(ホーチミン)、香港をまわってきました。

今日は、僕が考えている東南アジアの牡蠣事業の展開のことに触れたいと思います。

2013年に、ベトナムに現地法人をつくり、ショッピングモールのフードコートにスタンド式カキ小屋を出店しましたが、たまたまご縁があってベトナムに進出しただけで、その話しは本題ではないので省いておきます。

東南アジアに牡蠣を売りたいと思って少しずつ動き始めたのは、2012年の末からですが、その動機は、三陸牡蠣業界を震災前よりも遥かに良くしたい、そのためには海外に販路を作らないとならない、というものでした。

そう考えてから今日までに訪れた東南アジアの都市は次の通りです。
マレーシア/クアラルンプール
ベトナム/ハノイ、ホーチミン
タイ/バンコク
カンボジア/プノンペン
インドネシア/ジャカルタ、スラバヤ、バリ

マレーシアやベトナムではカタコト英語での飲食店などへの営業も行いました。またベトナムでは冒頭に書いた通り現地の人とカタコト英語を使って一緒に会社をつくり牡蠣を売る場所も作りました。現在、東南アジアに定期的に牡蠣を輸出している状況ではまだなく、香港だけに少量の牡蠣を輸出しているだけとなっています。

東南アジアと言っても、国も違えば、いや同じ国でも都市が違えばマーケットが変わりますし、それらを一緒くたにすることは出来ませんが、傾向としては考えることができます。なぜなら、それぞれ同じ新興国として似ている部分があるからです。

牡蠣産地を有している地域とそうじゃない地域、剝き身牡蠣が一般に流通しているところとそうじゃない地域、海外(特に西洋)からの来訪者が多い地域とそうじゃない地域、そういう特性を考えながら、牡蠣という共通項で比較分析すると面白いのです。

僕が考える東南アジアでの展開を書く前に、日本国内における一般的な牡蠣の生産から販売についての流れを記してみます。

1/ 種苗生産
  牡蠣は積算水温(海水温が10℃を超えた温度差の累積温度)が600℃を超えると産卵開始しますが、その際に採苗器(ホタテの貝殻、プラスティックなどの原盤)で牡蠣の幼生を受け止める採苗と呼ばれる工程と、その採苗した幼生を指の爪の大きさくらいまでに育成する工程があります。人工的な採苗では採苗器を使わない場合もあります。

2/ 本養殖
  a/ ホタテの採苗器で採苗した場合(カルチ方式):牡蠣の種が付着したホタテの貝殻をロープに挟み込み、または針金を通し、牡蠣筏、あるいは延縄のロープに垂下し、育成します。剝き身牡蠣を生産するには効率のよい方法ですが、殻付き牡蠣を出荷するためには、身入りの均一化を図るために一度陸上にてカブ状になった牡蠣を1個ずつバラバラにしてから丸カゴやバスケットに入れ換えする必要があります。三陸などの一部の産地では、さらに身入りや形をよくするために耳釣りと言って、牡蠣の蝶番の部分をドリルで穴を開けテグスを通して垂下するロープにくくりつけてやる場合や、カイデライトと呼ばれる一種のセメントを耳釣りのようにロープに牡蠣を接着させ垂下する場合もあります。

  b/ プラステックの採苗器、または人工的に採苗した場合:これはシングルシードと呼ばれますが、丸カゴ、バスケット、あるいはプラスティックのネットで自作したカゴなどに入れ、牡蠣筏、または延縄のロープから垂下するか、あるいはワイヤーにバスケットを直接取り付けて、育成します。育成途中で、個々の牡蠣の成長の違いに合わせてカゴ替え、バスケット替えする必要があります。何故なら牡蠣は個々に成長スピードが異なるため、早く大きくなる牡蠣(ファストランナーと呼ばれます)は先に大きくなるため、海中のプランクトンをどんどん摂取しますが、小さい牡蠣は摂取も小さいため個体差が広がるのです。ファストランナーの牡蠣はそれだけを一つのバスケットに入れるなど、サイズ分別(グレーディング)を行いながら養殖することがこのシングルシード養殖の要諦と言われています。

3/ 水揚げ
  a/ 陸上に運び、生食用の場合、紫外線殺菌した海水に一定時間浸けて浄化します。生食用ではない場合には、そのまま次の出荷工程に進みます。

  b/ シングルシードは大抵、殻付き牡蠣の生食用として出荷されるので、紫外線殺菌した海水に一定時間浸けます。

4/ 出荷・販売
  a/ 剝き身にする際は、牡蠣同士がくっついても構いなく剥き子さんが剥いていきます。剥き子さんは広島や三重では外国人の登用が多く、宮城では家族が剥いています。またこの養殖方法による殻付き牡蠣の場合には、大抵、かき小屋等の焼き牡蠣として比較的安価に提供されます。丸カゴ、バスケット、耳釣り、またはカイデライトで養殖されたものは、殻付き生牡蠣としてオイスターバー、料亭、居酒屋に出荷されます。

  b/ 上記の丸カゴ、耳釣り、カイデライトの養殖牡蠣と同様に、殻付き牡蠣としてオイスターバー、料亭、居酒屋などに出荷されます。但し、このシングルシードは(a)よりも下貝(カップ)が深く形が良いために日本では高値で取引されます。


ざっと以上の流れですが、東南アジアへの展開として考えた場合、次のことが考えられます。

ア/ ホタテの原盤(採苗器)で養殖した牡蠣(a)の剝き身を輸出する場合
  → 牡蠣養殖を行っている産地近くの都市では価格競争力はありません。例えジャパンブランドであっても厳しいと感じます。但し、産地近くではない都市において、IQF冷凍(塊ではなく1粒ずつに分けて冷凍されたもの)の剝き身であれば可能かもしれません。また干し牡蠣として提供する場合も可能かも知れません。ただこの場合に日本で手間(コスト)をかけた際に、現地では比較的低価格で提供されるであろう剝き身のIQF、または干し牡蠣で利益が取れるかどうかの課題が残ります。

イ/ ホタテの原盤(採苗器)で養殖した牡蠣(a)の加熱用殻付き牡蠣(カブから分けただけのもの)を輸出する場合
  → 価格競争力は比較的持てると考えますが、産地を近くに有している地域では価格競争力は出ません。しかし、先日のベトナムで見たフランス産の牡蠣の状態を見ると、日本と競合となる他国も決してクオリティーの高い牡蠣を出しているのか解らないと感じましたので、牡蠣マーケットが成熟していない状況下では、価格における競争力を重視し、この場合の牡蠣を流通に乗せることを考えるのも一つの案だと思います。

ウ/ シングルシードとして養殖した牡蠣(b)を輸出する場合
  → 東南アジアにおいて、比較的ハイレベルな客層を有するレストランやショッピングモールでは、よくオーストラリアの殻付き牡蠣を見かけますが、牡蠣養殖技術という面から言えば、オーストラリアは世界トップクラスであり、なおかつ価格競争力も高い(つまり日本よりも安価に提供されている)ことから、どの地域でも競合になると考えられます。牡蠣そのもののクオリティーで言えば大差ありませんが、価格競争力では日本産の牡蠣が不利になる分、ジャパンブランドが通用するエリアに輸出していくか、あるいは日本国内においてシングルシード養殖を行う際に採苗から成貝出荷までオーストラリアのように2、3年かけず、1年で出荷することで漁場の回転率を高め、その結果として価格競争力を持たせるという2つの方法が考えられます。

エ/ 種苗(種牡蠣)を輸出する場合
  → 60年代から70年代にかけてフランスで牡蠣が絶滅しかけたときに、日本から種牡蠣が輸出されフランス牡蠣業界を救ったという事実は有名ですが、その他にも日本からの種牡蠣がアメリカ、オーストラリア、他、さまざまな国に輸出されました。しかし現在続いているところはありません。何故なら、輸出した国々では現在、人工採苗、または現地での天然採苗に切り替えているからです。もう日本からの輸入を行う必要がないからです。同様に日本側も安い種牡蠣を輸出するメリットがないと思われています。今後、東南アジアへの展開として考えた場合、世界で一番に広温性、広塩性の性質を持つ品種の真牡蠣(パシフィックオイスター)を日本から輸出することは可能であると考えています。但し、日本側の種苗生産を行う養殖業者が日本国内に販売するものと比較した場合、得られる利益が小さくなることが考えられ、どれだけメリットを享受できるか課題は残ります。またこの場合の種苗提供の形はホタテ原盤での提供がもっとも競争優位性があると考えます。シングルシードでは他国のほうが日本国内よりも安価に製造しているからです。

オ/ 種苗を輸出し、現地で養殖する場合
  → このパターンによる日本からの牡蠣ビジネスはほとんど実現されていません。エの通り、種苗の輸出そのものは行われていたものの、種苗を販売しただけであって現地養殖したのは現地の養殖業者であり日本側の事業ではありません。現地で養殖する場合には、当然、現地の養殖業者との連携が必須であり、また現地の養殖業者がどれだけ日本国内の養殖方法に精通しているかの問題が残ります。一旦、現地の養殖業者を研修目的で1年以上、日本国内の牡蠣養殖の現場で訓練を行う必要があるかも知れません。しかしながら、日本の高い人件費と高い物価で生産された牡蠣を海外へ輸出し販売するよりも、遥かに価格競争力があるこの方法は日本側のメリットのみならず、現地での雇用拡大、安定養殖による地域への経済効果、さらにはその地域から海外輸出し外貨を稼ぐ方法も含めて考えれば、総合的なメリットは多大であると考えています。

カ/ 海外で牡蠣レストランを経営し、日本から牡蠣を輸入する場合
  → 生産と販売は車の両輪であり、いかにクオリティーが高い牡蠣を日本で養殖生産しても、販路がなければ何にもなりませんが、自身で海外に牡蠣レストランを経営することが、もっとも確実な販路となりえます。2013年にベトナムでスタンド式KAKIGOYAを始めた動機はまさにそれで、ショッピングモールのフードコートに、ファストフードライクに調理した牡蠣を提供しました。しかし2年運営しテストマーケティング程度で終わったのは残念でしたが、現地法人の設立から現地の人との交流、現地の方の様子が解った経験は大きいと思っています。今後、流通業者がこのように海外現地での川下統合を目指す方法は、現実的な選択肢として十分に考えられるだろうと思っています。


ざっと以上のような選択肢があり(実はさらに現実的な選択肢はありますが現在自社で検討しているため伏せておきます)、当然、国、または地域によって、対応策も異なりますが、一つ重要だと思っていることは、マーケットを国や地域という平面で見るのではなく、時間軸を含めて考えるということです。

日本国内でも、オイスターバーという業態が出現し拡大を始めたのは、たかだかこの10年ちょっと前です。
僕は2002年末からインターネットで殻付き牡蠣を販売していますが、殻付き牡蠣の需要はここ4、5年が急激であり、生産者においても、この10年間で年々増えてきた程度です。

従って現在、その国、あるいは地域で、殻付き牡蠣市場はまだまだ浸透していないからダメだ、と思うのはナンセンスであり、日本と同様に、確実に日本と同じような道を歩み、殻付き牡蠣文化が広がっていくのです。

時間軸を含めて考察し、なおかつ、日本側の立場のみならず、現地の地域経済のことも含めて考えていく必要があるのだろうと僕は感じています。

そして、この東南アジアでの牡蠣事業を成功させることが、やがて、南米、アフリカへも同一の手法で展開することが可能ではないかと思っています。つまり時間差展開が可能という考えです。

そういう視点で、僕は今、東南アジアを重視しています。


インドネシア、バリでいただいた地元産の牡蠣
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インドネシア、スラバヤでいただいた地元産の牡蠣を使った料理
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インドネシア、ジャカルタでいただいた日本広島産の牡蠣
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ベトナム、ホーチミンでいただいた地元ムイネー産の牡蠣
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ベトナム、ホーチミンの有名ホテルで見たフランス産の牡蠣
Vietnam

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