日本では、牡蠣というと、牡蠣フライや牡蠣鍋などに使われる「剥き身牡蠣」をイメージされる方が多いと思います。
一方、殻付き牡蠣は高価なもの。殻を開けるのも難しいし、高いオイスターバーに行かなければ食べられないと思われています。
しかし、一度、殻付き牡蠣の美味しさを知ったら、殻付き牡蠣ファンになるのも当たり前だと思っています。
何故なら、剥き身牡蠣は、剥かれてから1、2日過ぎているので活きていませんが、殻付き牡蠣は活きているのです。
剥いてから時間がたった牡蠣と、剥く直前まで活きているものでは、鮮度が全然違いますし、それによって美味しさも全然違います。
それでも、日本で殻付き牡蠣が一般的では無かった理由として、もちろん消費者側にニーズがあまりなかったこともありますが、生産者側も殻付き牡蠣をつくるための養殖方法を進めてこなかったのも原因としてあったのだと考えています。
殻付き牡蠣が、マーケットに流通するには、剥き身牡蠣だと問題にはならない「殻の形」が重要視されます。
今までの日本の生産方法では、殻の形が比較的良いのは、せいぜい2、3割程度。
殻を剥いて剥き身牡蠣にする場合なら、殻の形は重要ではないのですが、殻付き牡蠣で出荷しようとすれば、殻の形が大切になってきます。
そこで、シングルシードという種牡蠣を利用し、いわゆる一粒牡蠣として、牡蠣を育成することが必要になってくるのです。
震災後、三陸から世界に通用する牡蠣を作ろうと三陸牡蠣生産者とつくった会社「株式会社和がき」では、フランスから輸入した採苗器(クペール)を利用して種を採り、カゴに入れて育成を始めました。いわゆるフランス式採苗です。
その後、フランスの地中海の牡蠣養殖で行われている方法に則って、カイデライトと言われる特殊のセメントを利用し、栄養が全体にいく育成方法を用いていますが、今回、オーストラリアから輸入したバスケットも利用し、今後進めていきます。
このように、世界に通用する牡蠣づくりを行うために、日本の従来の牡蠣のつくりかたとは、全く異なる養殖方法を選びました。
残念ながら、日本の殻付き牡蠣の養殖方法のレベルは、フランスやオーストラリアなどと比べて遙かに遅れています。
遅れていたからこそ、各国の良い部分を吸収し、日本に合わせてアレンジしてより良いものをつくることに挑戦できればと思っています。
ただ、養殖方法の革命を起こすには、単なる養殖方法を変えるだけでは片手落ちです。
付加価値の高い殻付き牡蠣を販売する販路開拓も重要になるのです。
そのため、ジャパンブランドを背負って、殻付き牡蠣が主流である世界にも出していく。
今まで殻付き牡蠣養殖で、世界に遅れを取った日本が、震災を機会に牡蠣の養殖革命を行い、一気に世界に追いつき、追い越していく。
そうした夢、目標を描いています。