Money

クラウドファンディングでソーシャルビジネスを

何かしらの事業を立ち上げる場合、自分で貯めたり、家族などから借りた自己資金か、あるいは銀行融資(間接金融)によって、立ち上げの資金を用意しなければならないものです。

米国のように、エンジェルと呼ばれる個人投資家や、ベンチャーキャピタルから出資(直接金融)してもらって事業を立ち上げることは、よほどのことがない限り日本では難しいのが現状です。

事業が成長し、株式上場を目指せるものとなれば、ベンチャーキャピタルなどの投資家から出資を受けることが現実的に起こりえるのであって、シードマネー(立ち上げ時の資金)は、どうしても、自分で何とかするのが常なのです。

しかし、ここ最近、クラウドファンディングという資金調達方法が、非常に現実的になってきた感があります。

クラウドファンディングの意味は、ネットで調べればすぐに解りますが、不特定多数(クラウド)から事業資金を調達する(ファンディング)ということで、仕組みとしては決して新しいモデルではないのですが、この造語ができたことから注目され、今年に入って流行のようになっています。

僕は、このクラウドファンディングと親和性のある事業というのは、「ソーシャルビジネス(社会性のある事業)」だと考えています。

この流行のキッカケは、映画づくりや音楽づくりなどのアーティストへの支援やゲームソフトの開発支援と思いますが、今後、この仕組みが根付くとしたら、それは社会問題に対し果敢に取り組む社会起業家を応援するところではないかと思っています。

困った人を助けよう、困ったことを何とかしようとする人を応援しよう、という思いのパワーは強力だからです。

事実、当社が立ち上げた「三陸牡蠣復興支援プロジェクト」も、購入型のクラウドファンディングと呼べるものですが、震災・津波で壊滅状態となった三陸牡蠣産業に対し、復興後の牡蠣を送るという約束をして応援してもらった結果、わずか1年で、2万4千人以上の方々から支援が集まりました(当プロジェクトによる募集は1年で終了)。

もちろん、東日本大震災という未曾有の災害は、特別なことではありますが、冷静に社会を俯瞰するとき、沢山の社会問題があり、それに対し、何かしら応援したいという気持ちは、自身に余裕があるかないかは別にして、多くの方々が抱いている感情と思うのです。

僕が余裕があるかどうか関係がないと確信する理由は、こういうことがあったからです。

2011年3月11日の東日本大震災から、2週間後にスタートさせた三陸牡蠣復興支援プロジェクトにおいて、プロジェクト開始早々、事務所に避難所にいるある方から電話があり、「牡蠣の再生を応援したいけど、住所が避難所だが、できるか?」と聞かれました。他にも明らかに被災していると思われる方々からも多数の問合せがありました。

僕はとても複雑な気持ちでした。

ご自身が自宅を無くされ、避難所生活で困っている状況なのに、地域の産業復興のために、少しでも応援したいという思いをもたれているからです。

だから私は、人を支援しようとする気持ちというものは、決して余裕があって持つものではないと断言するし、逆に言えば、余裕があれば、誰でも支援するかというと、そうではないと考えています。

一方、ソーシャルビジネスで事業を興したいと思った人が、銀行からの融資を受けることもなかなか難しいと思います。

僕は今まで、幾つかのリアル事業を行ってきたなかで、都度、銀行からの融資を受けた経験から考えれば、社会性がある事業だから、という理由で融資を受けるのは、なかなか困難です。

銀行というところは、ベンチャーと呼ばれるような、何か得体の知れない未開拓の事業を行う会社に融資するよりも、既に他の地域で成功しているような名の知れたフランチャイズチェーンや、既に売上実績が経ち、間違いない財務状況の会社など、必ず返済してもらえる絶対的な見込みのあるところだけに融資するからです。

ましてや、一般のベンチャーとも違い、ソーシャルベンチャーの利益の見込みもあまりないようなものであれば、その返済原資はどこからくるのか、という問題に行き着き、借りるほうも聞かれると自信がなくなるわけで、やはりソーシャルビジネスを目指す起業家にとって、間接金融は困難と言わざるを得ないのです。

そういう意味において僕は、ソーシャルビジネス、あるいはソーシャル事業において、クラウドファンディングという一つの資金調達の方法が、非常に有効と考えています。

いや、ソーシャルベンチャーこそ、クラウドファンディングで、多くの方々から応援してもらい、応援した人も間接的に社会貢献になるような仕組みを持ったほうが良いと考えています。