熱き情熱

自己革新をめざす 〜牡蠣の新業態づくり〜

最近感じることがあります。

第一次産業は、他の産業と異なり、全体的に創意工夫が弱いのではないか、と。

僕が知る牡蠣養殖の現場でも、毎年毎年、同じことの繰り返しが多く、新しい養殖方法にチャレンジしたり、新しい販路づくりにチャレンジする生産者は、全国でもごく少数です。

僕のお付き合いする牡蠣生産者は他よりもとてもアグレッシブな、挑戦心の高い方ばかりですが、やはり一般的な生産者はそうではありません。

それに呼応するわけではないと思いますが、販売する側もどれだけ創意工夫しているのだろうかと感じます。

事実、ここ2、3年前にカキ小屋がブームになり、多くのカキ小屋が立ち並びましたが、同じやり方を続けていることもあって、何も目新しいことがなくなり、競争だけが激しくなり、厳しいカキ小屋も出てきています。

ところで、僕が独立時に始めたセブンイレブンでは、狭い売り場に2500アイテム以上あり、1年間で半分の商品が入れ替わるものでした。

セブンイレブン店を譲渡して10年以上経った今も、セブンイレブンはその傾向は変わらず、さらには受付業務が増えてスタッフが大変であっても、顧客満足を高める追求を止めることはないだろうと思っています。

繰り返しますが、そうした経験がある中で、第一次産業を見ると、あまりにも創意工夫がないと感じざるを得ないし、私たち流通側もネットを使い始めたくらいで、イノベーションは皆無だろうと思われるのです。

一方、牡蠣業界は、現在大変厳しい状況に置かれていると感じています。

1つは、牡蠣を扱う飲食店が厳しい状況に置かれていることです。

それは東日本大震災後に、三陸牡蠣を応援する方々が多くなったこともあって首都圏を中心にオイスターバーがたくさん作られ流行り、それが落ち着いてきたころに、次は、カキ小屋ブームが起きて、気軽にカキ小屋を始める飲食店がドーンと増えてきたために、一言でいえば、牡蠣を食するところがたくさん出てきました。

その結果、何が起こったかというと、牡蠣を食する需要よりも、店舗数などの供給が過多となり、1店あたりの売上が下がり、一方では人手不足が続くことによって、牡蠣を扱う飲食店業界が厳しい状況になっているということです。

もう1つは、シングルシード牡蠣養殖など付加価値の高い牡蠣づくりへ挑戦する生産者が少ないことです。

シングルシードに限らず、別な牡蠣の品種に挑戦したり、人工採苗に挑戦するなど、もっとさまざまな取り組みがあっても良いと思える牡蠣養殖において、生産者の平均年齢が上がり、養殖を辞める生産者がいても、新規生産者を入れることもあまりなく、目先の剥き身価格に一喜一憂し、シュリンクするマーケットをただ傍観しているだけという状況になっていると感じています。

もちろん、こうした生産者の取り組みに創意工夫がない背景には、彼らから牡蠣を仕入れる僕たち牡蠣の流通に携わる人たちにも原因していると認識しています。

そのために、僕は、このような状況を変えたいと思っています。

僕の立ち位置で、もっともっとできることを一生懸命に考えて自己変革していくことが大事だと思っています。

その一つが、今回の牡蠣キッチンカーです。

実際、とても小さな売り場ですが、僕は可能性があると信じていますし、今後も、新しい業態を開発することで、お客様には今までにない牡蠣を食する喜びを提供し、ひいては牡蠣業界の活性化に貢献したいと思っています。

こうしたら儲かるから、とか、そういう一時的な視点ではなく、今の業界において、自分が何ができるのか、その結果、最終的にお客様にはどういう満足を感じてもらえるのか、まさに2500アイテムを1年で半分を総入れ替えするセブンイレブンのように、常に自己革新を目指していきたいと思っています。

その結果、牡蠣を通して、牡蠣に繋がるすべての人の満足度向上に貢献できれば、本当に嬉しいです。