国内牡蠣事情

日本の牡蠣業界が伸びるために

小さい規模ながらも日本の牡蠣産業に身を置いている自分として、今後、日本の牡蠣産業が伸びていくためのことを、日頃考えていることを整理するために書いてみたいと思います。

まず、日本の牡蠣産業を伸ばすためには、大きく分けると次の3つになると考えています。

(1)国内牡蠣マーケットの拡大
(2)海外牡蠣マーケットへの展開
(3)牡蠣周辺ビジネスの拡大

確かに、ここ近年、年々減少してきた牡蠣生産販売の推移を見れば、(1)の国内牡蠣マーケットはもう伸ばせていけないだろう、だから(2)の海外マーケットへ打って出なければならないというマインドも理解できますが、僕は今でも国内も海外も同じように重要だと考えています。

理由としては、国内牡蠣マーケットが小さくなってきているといっても、それは剥き身牡蠣の生産販売が少しずつ減少してきた結果であって、殻付き牡蠣の市場は決して小さくなっているように感じていないからです。2012年以降のオイスターバーの出店ラッシュや昨年から非常に増えてきたカキ小屋はいずれも殻付き牡蠣を扱う飲食店ですが、当社としても一般消費者と飲食店への殻付き牡蠣の販売は伸びています。

しかしながら、オイスターバーやカキ小屋だけの消費量は国内全体の生産量から見ればまだまだ微々たるもののため、日本国内のように剥き身中心の市場ではない殻付き牡蠣が流通している海外での展開は必須になると考えています。

一部繰り返しになりますが、それぞれ具体的に取り組みを書いてみます。

(1)国内牡蠣マーケットの拡大

・剥き身市場は年々減少のため、殻付き牡蠣も含めた生産販売へシフトする。
・生食用牡蠣の流通のために、衛生管理レベルを高める(海域の細分化、浄化方法の研究等)。
・カキ小屋を一過性のブームではなく日本の食文化とする。
・海外客が来られるホテル等で生牡蠣を取扱えるような法律を整備する(保管方法、営業停止問題等)。

(2)海外牡蠣マーケットへの展開

・海外に出荷できるような殻付き牡蠣養殖方法に取り組む(殻の形を良く、鮮度を長く)。
・ハーフシェル凍結など冷凍インフラを増やし、海外輸送ルートをつくる。
・日本の殻付き牡蠣は海外の牡蠣よりも高価で競争力のない品質のため、品質を上げつつローコスト生産を行い世界との競争力を高められるように生産を一部自動化していく。
・相手国の輸入制限が撤廃、あるいは緩和されるように国が調整をはかっていく。

(3)牡蠣周辺ビジネスの拡大

・海外の多くが日本の牡蠣を母貝とした人工種苗生産をしているが、もともとの日本でつくる強い種牡蠣を海外へ輸出する。
・シングルシードではなく、日本で一般的なホタテ原盤を利用した垂下式養殖技術を発展途上国・新興国などへ輸出し、地域の食料自給率向上と雇用創出に貢献しつつ、ローカルビジネスを展開する。そのための牡蠣ロープ等の資材も輸出する。
・フランスやオーストラリアでは牡蠣生産者がムール貝も養殖し年間収入の安定を図っているが、日本でも夏が旬の岩牡蠣、ムール貝の養殖を行い生産者の収入を高め安定させる。

以上です。

既存の牡蠣生産に携わる方々には異質な意見に感じられるかも知れませんが、国内の牡蠣産地をまわり、海外の牡蠣産地もまわりながらマーケットを俯瞰したときに、上記のように感じています。
一つひとつ説明を加えなければ、その意図、意味は伝わらないかと思いますが、追々ブログに書いていきたいと思っています。